【開発秘話】がま磯 グレスペシャルF
2025.10.10
開発に至るまで
竿の構想段階から考えると、約5年かかりましたね。というものの、5年間みっちりかけたというわけではなくて、コロナ禍の影響でここまで延びてしまいました。同時期に“ATTENDER-Ⅲ”も開発に向けて進めていたんですけど、コロナウイルスで色々と制限がかかって、なかなか大変でしたね。一時は、“グレSpecial F”の企画自体がなくなるかもしれないという危機にも直面しました。
全国的に緊急事態宣言が発令され、実釣テストに行くことすら出来ず、社内にいる日がいつもより多くて不思議な気持ちでした。「完成させる」というゴールは変わらないので、すぐに気持ちを切り替えて、社内で様々な要素を盛り込んだ竿曲げテストをひたすら繰り返していました。でも、社内でのテストには限界も感じていました。本来の実釣中だと、風が吹いていたり、餌で手はぬるぬるしていたり、足場が不安定なところでグレの引きを感じたりとか、自然の条件が揃っていますが、それらを社内で再現するのは不可能なので。
特にグレ特有のかなり低い位置からの引きと、やり取りの最中に竿が叩かないことの証明は、実際にグレをかけて竿曲がりを確かめないとわからないので、やきもきしていました。一日でも早くコロナウイルスが収束してほしいと心の底から願っていましたね。
道半ばで心が折れることは?
なかったですね。より良い竿を完成させることしか頭になかったので。未知のウイルスが感染拡大していたので、外出自粛は仕方がないなと思っていました。苦労した点でいうと、
竿の絶妙なバランスを探るところですかね。磯カタログのポジショニングマップを見てもらえれば、すぐ気づかれると思いますが、かなり挑戦的な竿なんです。初期段階のテストは良くないところだらけで。まあ初期段階が改善箇所ばかりになるのは、いつも通りのことなんですけどね。今回は、いい塩梅を模索することに時間をかけました。
今までこのような長期戦はありましたか?
二十年間、竿開発に携わってきましたが、こんなに時間がかかったのは今回が初めてかもしれないですね。でも、基本的にどの魚種よりも磯竿は一番時間をかけて作っています。“がま磯”は特に歴史が深いです。歴代竿のクオリティーも高いので、それを超えること自体が難しいんです。でも、時代とともに技術が進歩しているので、どんな風に最先端技術を活用して、より良いものを生み出そうかを常に考えています。ああでもない、こうでもないと試行錯誤するには、絶対的に時間が必要になるので。
実釣テストの場所選び
そのシーズンで比較的に釣れやすいところを選んでいますね。魚がかかればかかるほど、竿の強度や調子を確認できる回数が物理的に増えるので。今回の実釣テスト場所になった上五島は日本一、いや世界一実釣テストに適した場所だと思っています。テスターの協力もあって充実したテストになりましたね。五島列島に行くには費用がどうしてもかかってしまうけど、一日行くだけでそれ以上の価値があると私は思います。
これからの「がま磯」
磯釣り師が求める1歩先を行くような竿を開発できるように努力し続けたいと思っています。そのためには、がまかつが誇るテスターの最先端の釣技を身近に感じながら、常に新しい情報に適応する竿を試作し続けようと考えています。
